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日本経済復活への期待/弁理士業務を通じて思うこと

日本経済復活への期待 / 弁理士業務を通じて思うこと

大阪公立大学校友会 理事

大阪公立大学工学部機械工学科同窓会 会長

大阪市立大学工学部同窓会 会長

吉田 稔(大阪市立大学工学部機械工学科 昭和52年卒)

新年早々、地震や空港事故など、大変なニュースが続いております。

 

特に能登半島の被災状況には胸が痛くなりますが、救援・復興に向けた動きには、いつもながら、国民がこぞって助け合おうという、日本らしさが出ていて胸が熱くなるのも感じます。被災地が一日も早く復興し、日常を取り戻されることを心よりお祈り申し上げたいと思います。

 

私事で恐縮ですが、昨年4月に古希を迎え、現在満70歳の時を過ごしております。若いころ、60歳くらいの老人を見るにつけ、いかにもよぼよぼで、ただ何をすることもなく余生を送るのみの人、との印象でした。それより10年も長く生きている自分はといえば、白髪頭になったとはいえ、上記の印象ほどの老化は進んでおらず、またお医者さんのお世話になることもなく、今のところ、元気に活動することができています。私に限らず、私より年上の役員の皆さんもすこぶるお元気です。医療技術の進歩のおかげか、四季が巡り自然豊かなこの国の環境のおかげか、栄養豊富で健康食としての和食中心の食事のおかげか、ゆったりと謙虚な国民性のおかげか、今や世界一、二の長寿国となったこの国に暮らしていられる幸せを感じずにはいられません。「そんなことを言い始めることこそ老化の証拠や!!」との声が聞こえてきそうでもありますが…。

 

ともあれ、70歳という区切りの年齢となりましたので、自己紹介がてら、私のこれまでを大急ぎで振り返ってみたいと思います。

 

高度成長期途中の1970年(昭和45年)、大阪万博が開催された年は、高校2年生でした。学園紛争の嵐は我が出身高校まで及んでいましたが、世は好景気に沸き立っていました。理系学部は結構人気があり、一浪の後、1973年(昭和48年)、市大工学部機械工学科に入学しました。当時、学園紛争の余波が続いており、機動隊に守られながら試験会場(1号館講堂)に入り、寒さに凍えながらの入学試験でした。入学金は市外でしたので7,000円、授業料は他の国公立大学と同じで年間12,000円でした。このことをもって私学出身の友人、先輩から、今だに「俺らの税金で勉強してからに…」と恨めしがられることがありますが、「何言うてんねん、アンタらそのとき税金払うてへんやろが。」とやり返します。学費の安さが家計を助けたことは間違いなく、少しは親孝行だったかな、と思います。

 

大学入学の年(昭和48年)の第1次オイルショックで高度成長期は終わり、エネルギー価格が著しく上昇していき、入学時とはうらはらに、卒業時は不景気で、就職難でした。ともかく1977年(昭和52年)に4年間の学生生活を卒業することができ、いったん油圧機器メーカーに就職しましたが、ここで人生の転機となるとんでもない選択をすることになります。それは、当時も今も、理系で最難関の国家試験といわれる弁理士試験への挑戦です。何故か? よく聞かれます。うまく言い表わせませんが、自分でできそうな分野での可能性の限界に挑戦してみたくなった。そこに弁理士試験があった、ということだと思います。例えば、山岳人が自らの可能性の限界のピークに挑戦してみたくなる、という気持ちに似ているのかもしれません。

 

弁理士としての活動を開始した1980年(昭和55年)ころの日本は、家電、自動車、半導体等の多くの分野の技術力で米国を凌駕するほどの勢いがありましたが、1985年(昭和60年)のプラザ合意以降の円高、1990年(平成2年)のバブル崩壊、1995年(平成7年)の超円高により国内産業の空洞化が進み、日本経済は今も続く低迷時代となりました。それは、1980年当時に比較した特許出願件数の減少としても明確に見て取ることができます。その間、世界中から有能な人材を集めることができる米国は、様々な分野において発展を続け、GAFAMに代表される巨大企業が米国経済を牽引しています。

 

では、日本経済はこのまま沈みゆくのでしょうか?私は全くそのようには思っておりません。例えば新幹線にみられるように、徹底的に安全性に配慮しつつも、超高速・快適でしかも正確な運行をするシステムを造りあげようとし、それを実現してしまう、例えば自動車産業にみられるように、EV化の潮流に押されることなく、多様な選択肢として種々のパワーユニットを提供しようとする、モノ造りにも見られる日本人のDNAを信じるからであり、弁理士の業務を通じて感じる、技術者の能力の高さを信じるからです。

 

このように、私は、日本が再び技術力に裏打ちされた経済力で輝く国になってほしいと願う一人です。長年、日本の技術力が相対的に低下したといわれますが、日本人の底力がそんなものでないことは、例えばWBC での日本チームの活躍が証明済です。コロナ禍を潜り抜けた今、復活の兆しが見え隠れします。遅れに遅れたリニア新幹線が進みそう、原発の再稼働、小型原発の設置が安全性を担保したうえで進みそう、10年後くらいに核融合の実用化が我が国で実現しそう、国が本気で力を入れはじめた、AI,AGIの発展を見据えた半導体産業が復活しそう、といった話題がよく語られるようになってきたと感じます。一人当たりGDPについていえば、15歳から65歳までの就労者1人あたり GDPはむしろ世界一という話もあります。そして、多くの企業が隣国から撤退しはじめたことも、日本経済の復活には追い風になるでしょう。

 

幸いなことに私は、日本一の公立大学の同窓会や、工学部の学科別同窓会に関与させていただいておりますので、特に若い世代の方々に向け、機会あるごとに上記のような明るく、前向きな発信を今後もしていきたいと思っております。